壬生六斎念仏講中は、日本・京都を代表する祭礼「祇園祭(ぎおんまつり)」に登場する山鉾の一つ「綾傘鉾(あやかさほこ)」で囃子方(はやしかた)を務めております。ここではその活動についてご紹介します。
綾傘鉾そのものの云われについては、綾傘鉾保存会のホームページをご参照ください。
綾傘鉾囃子方について
綾傘鉾は祇園祭に登場する山鉾の中でも最も古い形態である「傘鉾(かさほこ)」の姿を現代に伝えており、囃子方は皆、楽器を手に持ち徒歩で巡行をいたします。
【綾傘鉾の囃子方】
◎棒振り
棒を手に踊りながら見事な踊りを披露し「風流囃子もの」の要素を現代の祇園祭に伝える。
◎巡柱(じんちゅう)/太鼓方
締め太鼓を演奏するお囃子の中心となる存在。鉦、笛の旋律を熟知した者が務める。
◎笛方
篠笛や能管を用い、主旋律を演奏する。鉦方に熟練した者が次の段階として担うことが多い。
◎鉦方
掛け声とともに摺り鉦を叩いて鳴らし、各曲を祇園囃子たらしめている最も重要なパート。
山鉾巡行や、綾傘鉾保存会の依頼を受けて行う特別な公演においては棒振りは赤熊(しゃぐま)を被り、衣裳を纏い、巡柱(太鼓方)は神面と衣裳を纏ってお囃子を行います。
赤熊・神面を被り、衣裳を纏った者は神格の扱いとなるため、巡行において私語を発することはなく、その立ち居振る舞いにも一際気を配ります。
以下、綾傘鉾囃子方として御披露する演目(曲目)をご紹介します。
※曲構成に記す「●遍」とは●の数だけ繰り返しの意味です。
棒振ばやし(ぼうふりばやし)
壬生六斎念仏講中で行っている「棒振ばやし」の踊りを祇園祭の場において披露する、綾傘鉾を代表する演目です。
囃子方は「東西東西(とざいとうざい)」の口上で観客を呼び込み、最初は巡柱(太鼓方)の舞から始まり、途中より棒振りが登場をいたします。登場のし方も一気呵成に場に進み出たり、扇子を片手に舞いながら場に登場するなど様々。登場した棒振りは「清めの糸」を撒くことで場を清め、そこから見事な棒振りの技を披露していきます。
棒振りが撒く清めの糸の芯となっている鉛は縁起物であり、3つ集めて財布に入れておくと金運向上の御利益があるとされています。
大変めでたい演目であり、祇園祭(前祭)宵山の鉾町、山鉾巡行において披露される他、出張公演でも特に人気です。
【曲構成】
踊りのつくし(一遍)→棒のながし(二遍)→あげおさめ(三遍)
祇園囃子(ぎおんばやし)
地囃子(じばやし)とも呼ばれる定番曲。棒振り・巡柱は登場せず、太鼓方・笛方・鉦方のみで演奏をいたします。
祇園祭(前祭)宵山の鉾町の他、棒振り囃子を披露する前に演奏をさせていただく機会が多いです。
渡り囃子(わたりばやし)/戻り囃子(もどりばやし)
鉦方の音頭取りの号令を受けて、次々に曲を変化させ演奏していくお囃子となっています。
以下に紹介する「渡り囃子」と「戻り囃子」において笛方は篠笛ではなく、「能管(のうかん)」を用いるのが特徴です。
1.渡り囃子(わたりばやし)
全体的にゆったりとした曲調のお囃子です。
現在、対外的に披露する機会はございませんが、綾傘鉾囃子方の長期的な課題曲でもあります。
【曲構成】
渡リ打出シ→第六~神楽~大和舞~大和舞附地囃子→上ヶ是ヨリ流シニ渡ル→オマツ~ながし→上ヶ是ヨリ流シニ渡ル→若(一遍)
2.戻り囃子(もどりばやし)
緩急を経て軽快な曲調・速さとなっていくお囃子です。
祇園祭(前祭)宵山の鉾町にて披露をしております。
【曲構成】
地囃子→上ヶ是ヨリ流シニ渡ル→靏カラ朝日ニ渡ル~旭(三遍)→地囃子(二遍)→上ヶ是ヨリ流シニ渡ル→伍カラ錦ニ渡ル~錦(三遍)→上ヶ是ヨリ流シニ渡ル→雁金(二遍)→地囃子(一遍)→上ヶ是ヨリ流シニ渡ル→竹~ながし→上ヶ是ヨリ流シニ渡ル→若(三遍)~かぐらばやし(五遍 又は 七遍)
風流囃子(ふりゅうばやし)
令和4年(2022年)に講中の若手が中心となり、かつて「洛中洛外図」にも描かれた“風流囃子もの”を現代の世に再現したお囃子です。
傘方(傘を持つ者)を中心に棒振りと巡柱(太鼓方)の他、笛方と鉦方も輪になって一緒に踊りながら演奏をいたします。
上記の基本構成は初披露から2年を経て定まりつつはあるものの、毎年少しずつ変化を加えることで進化させることも目標としているお囃子です。祇園祭(前祭)宵山の鉾町にて披露しております。
洛中洛外図・上杉本「祇園会(右隻第三扇)」より:赤枠部分に傘鉾の風流囃子ものが描かれている